2014年度 カリキュラム@デジタルハリウッド大学院 2014年度 カリキュラム@デジタルハリウッド大学院

知識経営論3

日付
2014年07月16日 19:00~
場所
デジタルハリウッド大学院大学
受講生の感想

記:芳賀 晴一

7月29日記 芳賀晴一

知識経営論の第一人者である紺野先生の第三回目講義。テーマは、「ビジネスのためのデザイン思考の展開」です。導入部では、「なぜ、ネスレはネスプレッソ・カフェを作ったか?」。そこには、既存のビジネスモデルにイノベーションを起こすうえで、大事な示唆がある。ここを出発点に、先生の講義は展開されていきます。

①モノでなく関係性をデザインする
まず、エコノミストに書かれた「凋落する日本」に触れられ、「行き過ぎた効率化」が「新しい発想」の芽を潰し、結果としてイノベーションの起きにくい日本になってしまったと説かれます。確かに、短期的に目に見える成果を追求しすぎるあまり、「単純化、見える化、指標化」がはびこってしまった感があります。さらに、今のリーダーには、「ビジョンがない」、「リスクを取れるリーダーがいない」と手厳しい指摘。これで、つかみは完璧です。
 先生は今の状況を打開する有力な解として「目的に基づくデザイン思考の実践(目的工学)」をあげます。人間を関係性において観察し、その経験をデザインする「experience design」が肝。つまり、ハードやシステム等のモノ単独のデザインではなく、そこに関係性を見出し、経験全体をデザインすることが大事と強調されます。そして、行動観察・デプスインタビューからインサイトを導き出す手法としての「エスノグラフィ」を豊富な事例を挙げて説明されます。印象に残ったのは、家族の課題を解決するために、父子家庭にインタビューしそこで得られたインサイトからコトをデザインする。または、100歳以上で月1回以上旅行する世帯にインタビューしエクストリームユーザーとしてのインサイトを得る。これは、まさしくアノマリーから有力なインサイトを得る手法です。ただ、調査手法としては相当高度なテクニックが必要で、どのような課題を設定し、いかに有力な仮説を立てるかに成否が帰結するといえます。先生曰く「課題を立てるのが一番難しい!」、至言です。

②コンセプト、シナリオ、ビジネスモデル
 次に、得られたインサイトをベースにどのように具体的なコンセプトを導き出すか。コンセプトはいくつかの変数からできていることを理解すること。そして、顧客価値(ベネフィット)との因果関係を文脈でつなげること。また、提供する顧客価値がビジネス上有効であるかの検証方法として有力なのがシナリオ・プランニングであること。シナリオロジックを整合させ完成させるためには、4象限で軸を作ってみる。先生は具体的に80年代の米国自動車市場の例をあげられました。しかし軸出しが難しい。縦軸を「石油価格の高低」で分けるのはまだしも、横軸を「ネオ伝統と内面思考」と人の意識軸で分け、かつ相対するキーワードを洞察または調査で導き出すのは至難です。ただ、社会の変化に合わせ、シナリオで描いた世界が4象限のどこに落ち着きそうかを見てみるのは意義のあることだと思います。
 最後に今日のメイン、ビジネスモデル・キャンバスの演習です。これは、分析のためのフレームワークではなく、何回も書き直すことが重要。複雑で絡み合った要件を整理しつつ戦略を練り上げていくためのFW。新鮮だったのは、環境分析はFWの外で行うこと。つまり、外的環境の変化に応じて、キャンバスを何回も描き変えていく。また、キャンバスの上部には上位概念が描かれ、下部には戦術的要素が描かれる。ビジョンは顧客価値の中に包含される。複雑な要素を概念図として一枚にまとめるこのFWはとてもユニークで、斬新と感じました。まさに場面を切り取る静的なFWの代表格とも感じました。

③デザイン思考のイノベーションのための場
 こちらは、授業では取り上げられませんでした。時間があればおそらく、「ヒューチャーセンター」の事例を紹介いただけたかと思います。

しかし、かくも高名な先生の講義を直に受けられるのはSTRAMDならではですね。今回の講義は深遠な知識経営のダイジェストに過ぎません。また、「頭で理解できることと、具体的に実行できる」は全然違うと考えます。実践を重ねて、この貴重な学びを体に少しずつでもインストールさせていきたいと思います。

デジタルハリウッド大学院と連携5年目 2017年度第8期開講

《STRAMD》

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