2013年度 カリキュラム@デジタルハリウッド大学院 2013年度 カリキュラム@デジタルハリウッド大学院

日本文化とデザイン論4

日付
2013年12月19日 19:00~
場所
USTREAM STUDIO AOYAMA TOKYO 1st
受講生の感想

記:岡本 由紀恵

記:STRAMD4期/ 岡本 由紀恵

ホテル業に携わっている人なら、必ず気にする「新しい」ホテルの存在。その着眼点は本当にさまざま。私は、就職してからというものホテル業一本だが、その就職活動で内田繁先生の名前を初めて知った。
「デザイナーズホテル」今や、聞き慣れたこの言葉の最初を作った人。それが内田繁先生だとあることを見て、この業界に新しい風を送り込んだ人なのだということがすぐに分かった。
私が生まれ育った福岡にそのホテルがある。「ホテル イル・パラッツォ」という名前のこのホテルは、賑やかな屋台の並ぶ中洲の中心でひっそりと、且つ存在感をもって佇んでいる。地域の色を強く感じさせる面白さが、内田先生のホテルにはある。都心で、ある一定の顧客に絶賛される高級ブティックホテルとも違う、地域に根を持つしっかりと味のあるホテルだ。
それが、そこに住む人々にどんな影響を与えるか。それは自分たちの街を他のどの場所とも切り離し、特別なものへの愛着を育ててくれる。つまり、その真ん中に「人」を置いている、泊まるゲストにも働く者にも事業の根っことなるものを感じさせてくれる。
稼働率とADR(平均単価)がホテルを数値化するものであるとするならば、クチコミや評点は言語化するものと言えるだろうか。これらの通常のホテルにある計りのようなもの、軸は、内田先生のデザインするホテルでは、決して第一義ではなく追随してくるものであると見える。つまり、デザインをすること=おもてなしをすることによって、初めて生まれる価値のように見て取れる。

ザ・ゲートホテル雷門がオープンしたときも、同じようにワクワクした。あの感覚が東京にもある。しかも地域の結束とキャラクターをしっかりもった浅草というエリアに。ゲートホテル雷門のコンセプトは“インティメイトなホテル“
「より親しみやすく、くつろげるホテル」は、コンセプトどおり個人を大切にした、小さなホテルイメージを持った知的・文化的にも満足させるホテルである。私たちが旅や非日常に対して求めるものは、日々変わってきている。旅先の情報はインターネットによって自由に手に入り、時と場所を選ばずに自ら取りにいくことができるようになり、旅のかたちはより個性的にそしてパーソナルになった。至れりつくせりよりも、親しみやすさで旅の肌感を感じたい、そう思う旅行者が増えているように思う。

「モダニズムは地域・民族の文化を捨ててしまった」授業のなかでそうおっしゃっていた。モダニズムが捨ててきたもの、それは地域独自・固有の文化である。近代の合理化に伴い、誰にでもあういわばスタンダードがもてはやされてきたが、そこには「人」が合わせることを前提としてきたように思う。
地域に固有の特性を生かしたモノ・場所づくりは、独自の文化に気づき、その解釈を的確に行うことで、新たな発見が顧客にもその地域に生きる人にも展開されていく。
ホテルは宿泊をするための機能を備えているが、わざわざそこへ足を運びたくなること、それはホテルを超越した価値であると思う。そんな価値を得ることは容易いことではない。「人」を据えるということ、固有の文化と向きあうこと、それは無限の価値を生み出す可能性を持ち合わせているということを実感させてくれる。
そんな考えに出会えたことは、この仕事をしている私にとって大変幸せなことだ。

《STRAMD》

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