2020.11.09
ニューノーマル時代に学ぶべきCI・戦略経営デザインの本質全3回特別集中講座オンライン(ウェビナー)のお知らせ
2018.01.10
《STRAMD》2018年度第9期生募集記念 公開シンポジウム(無料)のご案内
2017.01.16
《STRAMD》2017年度第8期生募集記念 公開シンポジウム(無料)のご案内
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第14回 記:瀬田信吾 いつもと同じ教室に入ると、いつもとは違ったレイアウト。今日は、紺野先生の3回目の講座。多くのメンバーが楽しみにしていたグループワークが予定されているのだ。 紺野先生の講座は、スライド表紙に掲げられた一枚の写真から話が始まる。 カイザー・パーマネンテのイノベーションセンターでの一幕 病院の一室らしき部屋。中央にはベッド、そして2人の男性が左右に立つ。違和感が2つ。まず、ベッドのちょうど中央部分に置かれたサイドテーブルの上には微笑みを浮かべる老女の写真が置かれている。そして、その脇に、用途不明の直方体が置かれている。 カイザー・パーマネンテは、全米最大の非営利医療サービスを提供する団体である。2つのイノベーションセンターを持ち、そこでは様々な企業が協働しながら「現場からのイノベーション」に取り組んでいる。前述の写真はそのイノベーションセンターでの一幕。写真は患者に見立てた存在で、あちこちに動く中でどのようなシグナルが発せられるのかを直方体の物体を動かしながら観察しているとのことであった。 企業単独ではなく、複数の企業が技術・人的供与をし、協働してイノベーションに取り組んでいるという興味深い事例であった。 続いて、「ビュリダンのロバ」を引用しながら、確率論的・論理的に考えても答えが出ない局面でどのように解を導き出していくのかというお話。 「今日はいくつか英語の映像もあります。バイリンガルで行きましょう。」と軽いイントロダクション。教室の中には、苦笑いが。私も例に漏れず苦笑い・・・。 そして、英語でのインタビュー映像などを引用されながら、徐々に本日のメインテーマである質的研究方法論へと講義が展開されていく。 「お客様は自分の欲しいモノを、自分のコトバで語ることができない」 インタビュー映像での一言。ゆえに、既存のお客様からコトバで語れる現状への不満は出るものの、“本当の本当に欲している何か”を得ることは難しい。不確実で論理的・直線的思考が通用しない今の時代、エース顧客(と仰っていた気がする)を見つけること、あるいは仮説検証アプローチでプロトタイピングしながら進めていくことが重要になる、というお話は響くものがあった。 質的研究方法論 基本となるのは帰納的アプローチ。「参与観察→データからカテゴリ-へ→理論・モデルの構築→対話&実践」というステップの概略と、その底流にあるそれぞれ異なる学術背景を持つ3つのアプローチ(エスノグラフィー、グラウンデッド・セオリー・アプローチ、ナラティブ・ベースド・メディスン)をご紹介いただいた。 そして、今年度初めてのグループワークへ。 エスノグラフィーのお試し体験(エクササイズ) お題は、「ファスト・フードでもっと誇らしげに食事ができるような「ユーザ経験」のイノベーションを考える」こと。 典型的アメリカ人のインタビューを見た後に、グループごとにイノベーションを考える。 「難しいエクササイズを持ってきてしまいました。」とは紺野先生の言葉。その言葉通り、各グループ四苦八苦しながら、かつ十分な結論に至ることができないながらも発表へ。 短時間のワークながらも、それぞれに興味深い切り口・アイデアが散りばめられ、STRAMD受講生の多様性が垣間見られる一幕でした。 ポイントとなったのは、話している内容(英語なのでロクに分からなかったが…)よりもその裏に見え隠れする対象者の心の内側をいかに捉えるかということ。対象者の抱える問題(今回は、心理的葛藤)をどのように切り取り、問題解決策をどのような枠組みで考えるのかということだった。 この枠組みの捉え方も曲者で、社会的な認知を変えるという広さから、対象者の心的不安を直接的に取り除く(例えば、その行為を肯定する)という深さまで多様に考えられるから難しい。 講義の最後は、毎回のごとく活性したQ&A。 参与観察とは問題が生まれる“いつもの空間”に観察者がどっぷり入り込んだ定性的なデータを収集するということだが、観察者がその空間に分け入ることによって、“いつも通りではない空間が生まれる”のではないか?という質問があった。「それでいいんです。だって、だから企業ごとに違うイノベーションに繋がるんでしょ。」との回答。 データの集め方から、モデル化、そして解決策の検討まで最善解などないんだから、デザイニスト達が、それぞれの最適解を模索しつづけよ、そんなメッセージに感じられた。
第14回 記:瀬田信吾
いつもと同じ教室に入ると、いつもとは違ったレイアウト。今日は、紺野先生の3回目の講座。多くのメンバーが楽しみにしていたグループワークが予定されているのだ。
紺野先生の講座は、スライド表紙に掲げられた一枚の写真から話が始まる。
カイザー・パーマネンテのイノベーションセンターでの一幕
病院の一室らしき部屋。中央にはベッド、そして2人の男性が左右に立つ。違和感が2つ。まず、ベッドのちょうど中央部分に置かれたサイドテーブルの上には微笑みを浮かべる老女の写真が置かれている。そして、その脇に、用途不明の直方体が置かれている。
カイザー・パーマネンテは、全米最大の非営利医療サービスを提供する団体である。2つのイノベーションセンターを持ち、そこでは様々な企業が協働しながら「現場からのイノベーション」に取り組んでいる。前述の写真はそのイノベーションセンターでの一幕。写真は患者に見立てた存在で、あちこちに動く中でどのようなシグナルが発せられるのかを直方体の物体を動かしながら観察しているとのことであった。
企業単独ではなく、複数の企業が技術・人的供与をし、協働してイノベーションに取り組んでいるという興味深い事例であった。
続いて、「ビュリダンのロバ」を引用しながら、確率論的・論理的に考えても答えが出ない局面でどのように解を導き出していくのかというお話。
「今日はいくつか英語の映像もあります。バイリンガルで行きましょう。」と軽いイントロダクション。教室の中には、苦笑いが。私も例に漏れず苦笑い・・・。
そして、英語でのインタビュー映像などを引用されながら、徐々に本日のメインテーマである質的研究方法論へと講義が展開されていく。
「お客様は自分の欲しいモノを、自分のコトバで語ることができない」
インタビュー映像での一言。ゆえに、既存のお客様からコトバで語れる現状への不満は出るものの、“本当の本当に欲している何か”を得ることは難しい。不確実で論理的・直線的思考が通用しない今の時代、エース顧客(と仰っていた気がする)を見つけること、あるいは仮説検証アプローチでプロトタイピングしながら進めていくことが重要になる、というお話は響くものがあった。
質的研究方法論
基本となるのは帰納的アプローチ。「参与観察→データからカテゴリ-へ→理論・モデルの構築→対話&実践」というステップの概略と、その底流にあるそれぞれ異なる学術背景を持つ3つのアプローチ(エスノグラフィー、グラウンデッド・セオリー・アプローチ、ナラティブ・ベースド・メディスン)をご紹介いただいた。
そして、今年度初めてのグループワークへ。
エスノグラフィーのお試し体験(エクササイズ)
お題は、「ファスト・フードでもっと誇らしげに食事ができるような「ユーザ経験」のイノベーションを考える」こと。
典型的アメリカ人のインタビューを見た後に、グループごとにイノベーションを考える。
「難しいエクササイズを持ってきてしまいました。」とは紺野先生の言葉。その言葉通り、各グループ四苦八苦しながら、かつ十分な結論に至ることができないながらも発表へ。
短時間のワークながらも、それぞれに興味深い切り口・アイデアが散りばめられ、STRAMD受講生の多様性が垣間見られる一幕でした。
ポイントとなったのは、話している内容(英語なのでロクに分からなかったが…)よりもその裏に見え隠れする対象者の心の内側をいかに捉えるかということ。対象者の抱える問題(今回は、心理的葛藤)をどのように切り取り、問題解決策をどのような枠組みで考えるのかということだった。
この枠組みの捉え方も曲者で、社会的な認知を変えるという広さから、対象者の心的不安を直接的に取り除く(例えば、その行為を肯定する)という深さまで多様に考えられるから難しい。
講義の最後は、毎回のごとく活性したQ&A。
参与観察とは問題が生まれる“いつもの空間”に観察者がどっぷり入り込んだ定性的なデータを収集するということだが、観察者がその空間に分け入ることによって、“いつも通りではない空間が生まれる”のではないか?という質問があった。「それでいいんです。だって、だから企業ごとに違うイノベーションに繋がるんでしょ。」との回答。
データの集め方から、モデル化、そして解決策の検討まで最善解などないんだから、デザイニスト達が、それぞれの最適解を模索しつづけよ、そんなメッセージに感じられた。