2010年度 カリキュラム@デジタルハリウッド大学院 2010年度 カリキュラム@デジタルハリウッド大学院

戦略経営デザイン論19

日付
2010年12月14日 18:30~
場所
桑沢デザイン研究所
概要
ケーススタディー:INAX(2)理念開発・VI開発・事業開発
受講生の感想

記:田辺 千晶

第58回 戦略経営デザイン論(19)
記:田辺千晶

INAXのCI戦略:第2話
創業60周年を機に伊奈製陶からINAXへ社名変更を行うことが決まり、CIはロゴを始めとするVIS(ビジュアル・アイデンティティ・システム)の開発へ、ほぼ並行して企業理念の策定へと進められた。

●VISの開発:ロゴはイメージ・マーケティング戦略の要
開発にあたって「感覚訴求にポイントを置くロゴ」が欠かせないと考えた。
これからは「実際に使う」エンドユーザーから「私はINAXを使いたい」と言ってもらえるようなトータルなイメージ・マーケティング戦略を行うことが重要であり、ロゴはその要になる。
最終的に選ばれたのは、コーポレートカラーの「アメニティ・ブルー」を使ってINAXの事業領域である空間や環境をシンボリックに表したデザイン。「青い四角」を見るとINAXを想起させるように、パターン認識のドラマ作りを狙ったものである。

●理念の策定と実行する仕組みづくり:INAX5
現状の理念や行動指針を分析し、あるべき企業の姿を描いて伊奈社長と共に検討と議論を重ね、INAX独自の企業理念を策定。
「企業理念とその体系」として以下のINAX5を創り上げた。
PAOSのウェブサイト参照 ⇒ http://www.paos.net/work/inax.html

X1 存在意義:INAXは、私たちが仕事を通して社会に貢献し、生きがいを見出す「生活舞台」です。
X2 事業領域:INAXは、環境美を創造し提供します。
X3 経営姿勢:INAXは、お客様の真の満足を考え行動します。
X4 企業姿勢:INAXは、変化し挑戦します。
X5 企業目標:INAXは、世界に求められる存在になります。

理念は掲げただけに終わっては意味が無い。どう行動に結びつくのかが重要である。そこで、社内全体の共通理解の促進と意識改革を目指し、理念を行動指針に置き換え、個人レベル、部門レベルで目標を設定して実行する仕組みを作り、実現していった。

●事業領域の拡大:「水まわり空間事業」の開発へ
INAXのCIの最大の特色は、理念や社名変更、VIのみならず、新事業開発をも組み込んだことである。
「トイレを日陰者から日向者へ」をキーワードに、トイレをはじめとする「水まわり空間事業」へと事業領域を拡大。
「セルフコントラスト・マーケティング」という戦略を用いて、主力商品(事業)、サポート商品(事業)、シンボル商品(事業)、刺激型商品(事業)、特定戦略商品(事業)、センサー商品(事業)といった商品および事業のポジショニングを行い、それぞれの領域で商品・事業を開発していった。

●商品開発:ライフスタイルや社会的価値も提案
INAX独自の商品開発を目指し、テーマを決めて著名デザイナーに開発を依頼。単なるプロダクト・デザインだけでなくライフスタイルや社会的価値までを含めたデザイン提案を依頼した。
ケネス・グレンジ氏(英国):住宅&ホテル用トイレ・バス(タイルモジュール・ベースの商品デザイン)
梅田正徳氏:オフィス用トイレ(男女均等法時代の働く女性のニーズを取り入れて設計)
三橋いくよ氏:トイレ・バス(新しい「和」のイメージを取り入れる)
象設計集団:公衆トイレ(公園と商業施設の公共トイレのイメージ一新)

●海外製品の輸入とXSITEの開設
製品化まで長い時間がかかる商品開発と並行して、短期間で品揃えを増やすために取組んだのは、海外製品(トイレ・バス・水栓金具等)の輸入だった。
10カ国30メーカーと契約して集めた膨大な数の製品を展示・販売するためのショールームを、東京赤坂アークヒルズ最上階37階に1986年10月開設。眺望の素晴らしい都心の460坪XSITEはたちまち大きな話題を呼び、取材攻勢を受けることとなり、ひとつのメディアとしてINAXのブランド・イメージ向上に大いに貢献した。

来年年明けにINAX第3話へ to be continued…
***

社名変更のための調査から始まったというINAXのCIプロジェクトは新事業開発へと進み、事業の領域を拡げて確実に実現していくうちに、INAXが以前とは異なる企業へと生まれ変わっていっただけではなく、トイレに対する人々や社会の認識を変えてしまう「トイレ文化革命」へと発展していった。
世界中どこに旅行しても、いまの日本のトイレの快適性に適うトイレに出会うことはないだろうと私は思う。そんな素晴らしい日本のトイレ文化はきっとINAXのCIを機に生まれたのだと思うと感慨深い。

今回の講義では、デザイナーとの商品開発の様子やXSITE誕生時の現場などを映像でご紹介いただいたが、それを見ながらPAOS式の本格的CIのカバーする領域の広さと深さにあらためて驚いた。
INAXのCIは、まさにマーケティング戦略でありブランド戦略、PR戦略を総合的に行っているもので、企業戦略そのものなのだと思う。
そしてその成果は、STRAMD流に言えば、当時の社長伊奈輝三氏という素晴らしい経営者と中西先生の出会いと触発による化学変化の賜物なのかもしれない。

デジタルハリウッド大学院と連携5年目 2017年度第8期開講

《STRAMD》

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