2010年度 カリキュラム@デジタルハリウッド大学院 2010年度 カリキュラム@デジタルハリウッド大学院

戦略経営デザイン論15

日付
2010年11月02日 18:30~
場所
桑沢デザイン研究所
概要
ケーススタディー:セキスイハイム日本型CIの原型
受講生の感想

記:間瀬 裕士

第48回 記:間瀬裕士

◇CI成功のポイント
Corporate Identityの3段階
1.~Mind Identity
2.~Visual Identity
3.~Behavior Identity
さらにCIを成功するためには最初のMind Identityについて二段階で運用することがポイントである。
Mind Identity
1.~指針として
2.~理念・方針として
CIおいて企業内に様々ある価値観や考え方を全社的に理念・方針として一つにまとめていくことは難しい。第一段階として指針としてのMind Identityを少人数で一つの仮説としてまとめ上げることがプロセスとして不可欠である。この段階では多くの人との協働は議論の迷走を避けるためにあえて行わないほうが成果を上げやすい。トップが指針を承認した後にこれを全社員が共有する次の段階においてMind Identityを理念・方針としてまとめる。
Visual Identityという感性訴求は、その内容が経営の戦略ロジックと整合するようまとめることがポイントである。

多くの案件を手掛けてきた中西先生の実践的なアドバイスでした。PAOSによって電電公社がNTTに変わる際のCIが成功したことで広くCIの概念が普及した一方で、その後広告代理店や経営コンサルタント等が参入し、表面的なCIにより数多くの失敗例が生れてしまったことが、CI本来の価値を歪めてしまった側面があるとのことでした。

◇日本企業の将来を考えるにあたり
SUMSUNG会長の言葉
「21世紀は文化の時代であり、知的資産が企業価値を決める。企業は単に製品を売るだけでなくその活動を通じて哲学と文化を売る時代である。したがって企業のソフトな創意力が勝敗を決める。」(要旨)

◇日本型CIのプロトタイプ=セキスイハイムの事例
世界初、工場での住宅量産化に成功
1970年代前半、日本が経済成長の中で住宅が不足し、特に一戸建てに対する憧れが非常に強かった時代に積水化学工業の住宅事業部が住宅の工場での量産化に成功し、また企業全体でなくセキスイハイムという個別事業のブランドアイデンティティという意味でも成功した。工場で箱型ユニットを制作し、現場で積み上げて住宅を建設する画期的な方式である。しかし、在来工法への信頼が根強い市場に対して、あるいはむしろ事業化に懐疑的な社内に対しても如何にブランドを構築していくかが大きな課題であった。

四種の神器
このような状況下でPAOSが提案したのは社内でユニット工法の有効性、優位性、存在意義を共有できる書類の作成であり、それらが四種の神器として紹介された。
1.~ハイム・トータルライフ・コンセプトA
2.~ハイム・トータルライフ・コンセプトB
事業計画書。マーケティング戦略と戦術、イメージ向上、新規および既存の顧客管理などについて事業目標を定めたもの。
3.~ファクトブック
住宅産業における戦略立案を効率的に行うために必要な情報を網羅的に取りまとめたもの。
4.~ブランド・アイデンティフィケーション・マニュアル
ロゴマーク、名刺、ステーショナリー、看板など資格的要素を使用する際のマニュアル。

ロゴマーク=カナリヤマーク
ファミリーブランドを志向し小鳥のカナリヤをモチーフとした。
将来的に事業分離の可能性があった初期は「セキスイ」の文字が小さかったのが、その後「ハイム」の文字と同じ大きさになった。

今回の講義では、日本型(PAOS型)CIの原型としてセキスイハイムが取り上げられましたが、企業あるいは事業のおかれている状況と課題に対して取り組んだこと、すなわちバイブルとも言うべき書類を作成し行動につなげたこととの関係について大変分かりやすく理解できました。30年以上前の事例ですが、明確なコンセプトと企業を内部から動かしていく手法の分かりやすさについては今も色あせないと感じました。どうもありがとうございました。

《STRAMD》

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