2020.11.09
ニューノーマル時代に学ぶべきCI・戦略経営デザインの本質全3回特別集中講座オンライン(ウェビナー)のお知らせ
2018.01.10
《STRAMD》2018年度第9期生募集記念 公開シンポジウム(無料)のご案内
2017.01.16
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第41回 記:田辺千晶 金子先生の美的感覚練成論の2回目。1回目の「黄金比」に続く今回のテーマは「名画」だった。 前期の終わりに、夏休みの宿題として課されたのは「全人類の英知の通覧」のために、参考図書『西洋美術史』に載っている340点の名画・彫刻の作家、時代、所蔵館とイメージを覚えること!! 夏休みの間どこへ行くにも「通覧本」を連れていったにもかかわらず、読破できなかった自分を責めても遅い。「テストしますよ」という金子先生の言葉を思い出しては身震いしながらも、意を決し開き直って出席したのだが、結果は「恐怖に負けず出席して良かった!」と思える愉しい講義だった。 「名画」の観方を新たにする2つの資料映像を見せていただいた。 最初の映像は、イルマ・ブームというオランダのアーティストの『Art Barcodes』という作品。名画と色彩をテーマに、名画を構成している色彩を分解し、バーコードのように表現しているという異色の作品だ。 環境映像として流される彼女の作品は、さまざまな色の組み合わせとバランスの可能性を「これでもか」というほど提示し続ける。ブリジット・ライリーの美しいストライプの絵のバリエーションみたいだと思いながら観ていたら、金子先生から映像の種明かしがされた。 セザンヌやゴッホのような印象派の名画から、ジャクソン・ポロックやマーク・ロスコーの抽象画、シンディー・シャーマンやマシュー・バーニーに到る現代美術の作家の作品まで、各作品とその作品を色分解したカラフルで美しいバーコードの映像を対比して見せていただく。それは「あの名画を色だけで表現すると、こんなに見事なカラー・バランスが生まれるのか!?」という驚きと発見の連続だった。 次の映像は、恐れていたテスト問題を兼ねていた。 最初に映し出された画像を見て、教室内がどよめいた。次々と映し出される画像は、どこかで見たことがあるような気がするものばかりなのだ。でも決定的に違うのは、思い出すのは西洋絵画なのに、登場人物や風景が全て日本のものだということ。実はそれは2009年「大地の芸術祭 越後妻有アートトリエンナーレ」の参加作品で、日本のアーティスト(大成哲雄/竹内美紀子)が名画をベースに、ある種パロディ化しながらも日本の文化をみつめ、日本を表現している作品だったのだ。 テストとは、各作品の元になった名画の作品名、作者名を当てることだった。(!) 日本文化という言語であの名画を表現すると、なるほどこういう画になるのか、と感心、納得しつつも作品名と作者名はなかなか思い出せない。自らの記憶力の低下に愕然としつつ、結局、半分しか正解できなかったが、元の名画を思い出すために必死で思考を巡らせるのは面白い経験だった。 金子先生いわく、名画には「ものがたり」がある。名画とは「美的知的データベース」であり、時代を勝ち抜いてきた「時代のチャンピオン」である。そして「芸術家は名画からインスパイアされ」「名画は時代を、クリエイターを、触発し続ける」のだと。 私にとっての名画とは、作品を生みだした「ものがたり」をイメージし、その時代へ、土地へ、作者へと思いを馳せる旅へのトビラである。 「文化戦略は文化的素養なしには生まれない」とするならば、素晴らしい旅の経験が「文化的素養」となって戦略づくりに役立つときがあるかもしれない。 名画を観る楽しみがまたひとつ増えた気がする。
第41回 記:田辺千晶
金子先生の美的感覚練成論の2回目。1回目の「黄金比」に続く今回のテーマは「名画」だった。
前期の終わりに、夏休みの宿題として課されたのは「全人類の英知の通覧」のために、参考図書『西洋美術史』に載っている340点の名画・彫刻の作家、時代、所蔵館とイメージを覚えること!!
夏休みの間どこへ行くにも「通覧本」を連れていったにもかかわらず、読破できなかった自分を責めても遅い。「テストしますよ」という金子先生の言葉を思い出しては身震いしながらも、意を決し開き直って出席したのだが、結果は「恐怖に負けず出席して良かった!」と思える愉しい講義だった。
「名画」の観方を新たにする2つの資料映像を見せていただいた。
最初の映像は、イルマ・ブームというオランダのアーティストの『Art Barcodes』という作品。名画と色彩をテーマに、名画を構成している色彩を分解し、バーコードのように表現しているという異色の作品だ。
環境映像として流される彼女の作品は、さまざまな色の組み合わせとバランスの可能性を「これでもか」というほど提示し続ける。ブリジット・ライリーの美しいストライプの絵のバリエーションみたいだと思いながら観ていたら、金子先生から映像の種明かしがされた。
セザンヌやゴッホのような印象派の名画から、ジャクソン・ポロックやマーク・ロスコーの抽象画、シンディー・シャーマンやマシュー・バーニーに到る現代美術の作家の作品まで、各作品とその作品を色分解したカラフルで美しいバーコードの映像を対比して見せていただく。それは「あの名画を色だけで表現すると、こんなに見事なカラー・バランスが生まれるのか!?」という驚きと発見の連続だった。
次の映像は、恐れていたテスト問題を兼ねていた。
最初に映し出された画像を見て、教室内がどよめいた。次々と映し出される画像は、どこかで見たことがあるような気がするものばかりなのだ。でも決定的に違うのは、思い出すのは西洋絵画なのに、登場人物や風景が全て日本のものだということ。実はそれは2009年「大地の芸術祭 越後妻有アートトリエンナーレ」の参加作品で、日本のアーティスト(大成哲雄/竹内美紀子)が名画をベースに、ある種パロディ化しながらも日本の文化をみつめ、日本を表現している作品だったのだ。
テストとは、各作品の元になった名画の作品名、作者名を当てることだった。(!)
日本文化という言語であの名画を表現すると、なるほどこういう画になるのか、と感心、納得しつつも作品名と作者名はなかなか思い出せない。自らの記憶力の低下に愕然としつつ、結局、半分しか正解できなかったが、元の名画を思い出すために必死で思考を巡らせるのは面白い経験だった。
金子先生いわく、名画には「ものがたり」がある。名画とは「美的知的データベース」であり、時代を勝ち抜いてきた「時代のチャンピオン」である。そして「芸術家は名画からインスパイアされ」「名画は時代を、クリエイターを、触発し続ける」のだと。
私にとっての名画とは、作品を生みだした「ものがたり」をイメージし、その時代へ、土地へ、作者へと思いを馳せる旅へのトビラである。
「文化戦略は文化的素養なしには生まれない」とするならば、素晴らしい旅の経験が「文化的素養」となって戦略づくりに役立つときがあるかもしれない。
名画を観る楽しみがまたひとつ増えた気がする。