2012年度 カリキュラム@デジタルハリウッド大学院 2012年度 カリキュラム@デジタルハリウッド大学院

戦略経営デザイン論15

日付
2013年01月15日 19:00~
場所
桑沢デザイン研究所
概要
真の日本型CI:INAX(その2)事業開発のデザイン
受講生の感想

記:瀬田 信吾

■事業開発のデザイン
今回は、STRAMD3期の本講義最終回。STRAMDの主旋律である、中西先生の戦略経営デザイン論で締めくくられた。
前講義に引き続き、「事業開発のデザイン」をテーマに、INAX社をケーススタディとした講義であった。
「トイレを日向者に」を掲げて取り組んだINAX社での一連の事業開発は、10年間でトイレ市場を3倍にし、トイレ自体のバラエティ化も加速度的に推進した。そして、その動きは、かつて使用するのも憚られた公衆トイレの環境向上にまで繋がっていく。INAX社自身の発展はもとより、新たな市場の発展や世の中・生活者の志向性の変化にまで影響を及ぼしたということだ。

このケースステディは、「事業」とは何か?という示唆を含む。事業とは、「こと」の「なりわい」と書く。では、「コト・ビジネス」とは何か?講義での言葉を借りるならば「哲学売り」であり、理念・思想・価値観を世の中に投じていくことと解釈した。「事業」に経済的側面(乱暴に言えば、儲け)が必要条件であることに異論はないが、十分条件としての「価値創造」が求められるということである。
と、言葉にすると至極当然のように映ってしまうが、お題目的な「イノベーション」ではなく、あるいは世間に流布された「戦略論」でもなく、デザイン・アプローチによる「価値創造」あるいは「生活提案」とはどういうことなのかということを、実体験に基づかれたケーススタディを通じて、気づき学べるのが本講座の魅力であろう。

■一般教養としてのデザイン
さて、STRAMDでの初講義からおよそ9ヶ月が経つ。自分の中で、「デザイン」という言葉の解釈は大きく変わった。付け加えるならば、「戦略」も「経営」も「戦略経営」も「戦略経営デザイン」に対しても、捉え方が大きく広がったという実感がある。先の事業開発を取り上げても、左脳一辺倒で練り上げる戦略では実現しえまい。十分条件にあげた「価値創造」を描くには右脳的、というか「右左脳循環的」アプローチが必要なのだとつくづく思う。
そして、STRAMD Prospectus10の第1項には「ビジネスをデザインする前に「自分自身をデザインする」とある。すなわち、ビジネスにデザイン的アプローチが必要であるのと同様に、それは個人にも求められているということ。戦略経営デザイン論をはじめ、STRAMDの講義はビジネス・事業に立脚したテーマであるものの、それは常に個人へのメッセージを内包している。それは、ビジネスにおけるデザインの果たす役割を描き直すと共に、個人におけるデザイン・アプローチの可能性を問い直す機会を与えてくれる。「リベラルアーツとしてデザイン教育」、そこにニュー・ビジネス・スクールを掲げるSTRAMDという学び舎の存在意義を感じている。

「デザインとは何か?」
「それはあなたにとって、どのような意味があるのか?」


今回でSTRAMDの講義は終わることとなるが、決して受け売りの解釈に留めるのではなく、自分自身をデザインしつづけていくために、常に問い返し続けていきたい。

《STRAMD》

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