2020.11.09
ニューノーマル時代に学ぶべきCI・戦略経営デザインの本質全3回特別集中講座オンライン(ウェビナー)のお知らせ
2018.01.10
《STRAMD》2018年度第9期生募集記念 公開シンポジウム(無料)のご案内
2017.01.16
《STRAMD》2017年度第8期生募集記念 公開シンポジウム(無料)のご案内
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第25回 記:江幡菜美 中西先生の前期最後の講義となる第8回。 冒頭では、あらためて日本が時代の転換期を迎えたこと、そしてSTRAMDという場の意義についてのお話を頂きました。現在の日本企業が事業拡大をするためには、企業の経営進化を伴わなければならない。いかに「事業拡大=経営進化」の構造が創れるか、それが重要であること。そして日本人の美意識について、次のようなお話がありました。 江戸時代、外に美しい鳥がいると、日本人は画帳をもって駆けだしていった。鳥がいれば猟銃を持っていく、という考えのある海外の人間からしてみれば、日本人は非常に不思議な人種に見えたという。 これを聞いて、とても胸が熱くなるものがありました。本来持っていたはずの高い美意識や豊かな感性。その失われつつある心を取り戻し、「知的文化化社会」をどう創っていくのか。「文化」や「美」という物的・量的に価値判断できないもの、目に見えない感性を信じることができるか。それは日本が本当の意味で蘇ることができるかの要になるのではないかと思います。 *** 後半は「松屋銀座」のCIによる蘇業のお話でした。 こちらのお話もとても面白く、教室の受講生がわくわくしている空気が伝わってきました。 中でも松屋銀座のストア・プロモーションのお話はとても印象に残っています。お金のない再建、いかに効果的なプロモーションができるか?次々と繰り広げられるアイデアは、どれも斬新で活き活きしたものばかり。 ◆ストア・プロモーション1 : 野菜を広告のモデルに起用する。 モデル料がかからない野菜たち。それらをビッグ・ビジュアルに見せることにより、斬新だけれど親しみのある、印象的な広告となっています。自然の野菜はアップで見るととても美しく芸術的で、また各々で違う性格を持っているのが面白いです。そして何よりもモデル料が安いのが素晴らしい! ◆ストア・プロモーション2 : 写真の写真を作品として使う。 こちらは亡くなった有名人の写真をまたそれをモチーフとして写真家が撮り、それを作品として使用する、というもの。故人のビジュアルが大きく見えるため(マリリン・モンローやエルヴィス・プレスリーなど)、著作権として危なっかしいところもあったと仰っていましたが、ただ有名人がモデルとして写っているものよりもノスタルジックな雰囲気があり、訴えかけるアート性がありました。モンローの商品袋は授業内で写真を拝見しましたが本当にカワイイ!案の定とても売れ行きが良かったそうです。(そしてこのアイデアも実際のモデルを使うより安い!) ◆再建のためのアイデア : 乱立する石膏像 学校の美術の授業で使うような石膏像(例えばミロのヴィーナス像など)を、店内の要所に配置。台座の正面部分には松屋銀座の「MG」のロゴが大きく記してあります。石膏像という比較的安価なものを使いながら、芸術性と品のある遊び心が感じられ、松屋銀座のイメージにぴったりのものでした。残念ながら物質的な問題等で実現には至らなかったそうですが、今行われてもとても面白いと感じました。 長くなってしまうので割愛しますが、他にも◆ギフティング・カウンターの設置、◆風呂敷デザイン、◆トイレ・リニューアル計画(百貨店のトイレがきれいになった始まり)、◆「松屋銀座」のビジュアル・サンプル・デザイン集(季節柄のデザインなど様々なパターンを最初に決めてデザイン集にしてしまう。標準化の逆)、◆英仏日スペインの4ヶ国語店内放送(当時では珍しく、外国人にとっては親しみを感じさせると同時に日本人にとっても新鮮だった)、◆バイヤーRECOMMMEND(商品にバイヤーの顔写真とコメントを添える)などなど・・・。ターゲットの「新しがり屋」を飽きさせない斬新で魅力的なアイデアが満載でした。 改めて感動したのは、ひとつひとつのアイデアが「松屋銀座らしい」全体最適がなされているということ。無限にある選択肢の中から、最適な解を選ぶ。中西先生のCIのケース・スタディでは、どの事例もきれいな全体最適がなされていて、それを可視化したマップもとても美しくピタッとおさまりが良いので、いつもため息が出ます。(現在2期生はグループに分かれ同じテーマの下に課題に取り組んでいるのですが、この「全体最適」が本当に難しい・・・。なかなかきれいにおさまってくれないため、奮闘中です。) 前期、主に中西先生の授業を通して受講させて頂き気づいたことが一つあるのですが、それは「良いデザイン」というのは、まるでその解が「当たり前のように見える」という要素もあるのではないかということ。結果だけを見れば、その背景を知らない者にとっては「なぜ今までなかったんだろう?」と思わせ、あるいはそれすら考えさせない程に違和感なく受け入れられてしまう。おそらく、この時に買い物を楽しんでいた女性に「なぜ松屋銀座なのか?」と問いかけても、「だって、良いから。」といったような曖昧な答えしか返ってこないのではないかなぁと思います。「当然でしょ?」と言わんばかりの表情で。 ではなぜそれが「良い」のか?、先生のデザインが美しく感じるのは何故なのか、最適解を導きだすにはどうすればよいのか・・・。気づかされること、考えさせられること、STRAMDでは本当にたくさんの「思考の種」が得られます。最後になってしまいましたが、ブログのアップが1カ月以上も遅れてしまったことをお詫び申し上げたく思います。受講生が熱を持って講義を受け様々なコミュニケーションが生まれるのは、他ではありえない一流の講師陣による支えがあるからです。本当に多岐に渡る分野で、各先生方は今までに受けたことがないほど、心のある面白い講義をして下さいます。それに対し私たちもリアクションを返すこと、そして1期生の皆さんがして下さったように、STRAMDを次につなげることの重要性。改めて、STRAMDという場にいられることに対しての責任を感じました。 *** 授業の冒頭で中西先生が仰った「 人のゆく 裏に道あり 花の山 」という句。 学生一人、社会人の皆さんの中に紛れ込んで不思議な経験をしていますが、ヘタな就職活動よりも(就職活動もしなければいけないのですが)、ずっと未来に繋がる貴重な経験(花の山)であると確信しています。(なのでぜひ学生の方にSTRAMDに触れて頂きたいです!) 後期もどんどん「思考の種」を摘めるように頑張ります! (2011.8.13 記)
第25回 記:江幡菜美
中西先生の前期最後の講義となる第8回。
冒頭では、あらためて日本が時代の転換期を迎えたこと、そしてSTRAMDという場の意義についてのお話を頂きました。現在の日本企業が事業拡大をするためには、企業の経営進化を伴わなければならない。いかに「事業拡大=経営進化」の構造が創れるか、それが重要であること。そして日本人の美意識について、次のようなお話がありました。
江戸時代、外に美しい鳥がいると、日本人は画帳をもって駆けだしていった。鳥がいれば猟銃を持っていく、という考えのある海外の人間からしてみれば、日本人は非常に不思議な人種に見えたという。
これを聞いて、とても胸が熱くなるものがありました。本来持っていたはずの高い美意識や豊かな感性。その失われつつある心を取り戻し、「知的文化化社会」をどう創っていくのか。「文化」や「美」という物的・量的に価値判断できないもの、目に見えない感性を信じることができるか。それは日本が本当の意味で蘇ることができるかの要になるのではないかと思います。
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後半は「松屋銀座」のCIによる蘇業のお話でした。
こちらのお話もとても面白く、教室の受講生がわくわくしている空気が伝わってきました。
中でも松屋銀座のストア・プロモーションのお話はとても印象に残っています。お金のない再建、いかに効果的なプロモーションができるか?次々と繰り広げられるアイデアは、どれも斬新で活き活きしたものばかり。
◆ストア・プロモーション1 : 野菜を広告のモデルに起用する。
モデル料がかからない野菜たち。それらをビッグ・ビジュアルに見せることにより、斬新だけれど親しみのある、印象的な広告となっています。自然の野菜はアップで見るととても美しく芸術的で、また各々で違う性格を持っているのが面白いです。そして何よりもモデル料が安いのが素晴らしい!
◆ストア・プロモーション2 : 写真の写真を作品として使う。
こちらは亡くなった有名人の写真をまたそれをモチーフとして写真家が撮り、それを作品として使用する、というもの。故人のビジュアルが大きく見えるため(マリリン・モンローやエルヴィス・プレスリーなど)、著作権として危なっかしいところもあったと仰っていましたが、ただ有名人がモデルとして写っているものよりもノスタルジックな雰囲気があり、訴えかけるアート性がありました。モンローの商品袋は授業内で写真を拝見しましたが本当にカワイイ!案の定とても売れ行きが良かったそうです。(そしてこのアイデアも実際のモデルを使うより安い!)
◆再建のためのアイデア : 乱立する石膏像
学校の美術の授業で使うような石膏像(例えばミロのヴィーナス像など)を、店内の要所に配置。台座の正面部分には松屋銀座の「MG」のロゴが大きく記してあります。石膏像という比較的安価なものを使いながら、芸術性と品のある遊び心が感じられ、松屋銀座のイメージにぴったりのものでした。残念ながら物質的な問題等で実現には至らなかったそうですが、今行われてもとても面白いと感じました。
長くなってしまうので割愛しますが、他にも◆ギフティング・カウンターの設置、◆風呂敷デザイン、◆トイレ・リニューアル計画(百貨店のトイレがきれいになった始まり)、◆「松屋銀座」のビジュアル・サンプル・デザイン集(季節柄のデザインなど様々なパターンを最初に決めてデザイン集にしてしまう。標準化の逆)、◆英仏日スペインの4ヶ国語店内放送(当時では珍しく、外国人にとっては親しみを感じさせると同時に日本人にとっても新鮮だった)、◆バイヤーRECOMMMEND(商品にバイヤーの顔写真とコメントを添える)などなど・・・。ターゲットの「新しがり屋」を飽きさせない斬新で魅力的なアイデアが満載でした。
改めて感動したのは、ひとつひとつのアイデアが「松屋銀座らしい」全体最適がなされているということ。無限にある選択肢の中から、最適な解を選ぶ。中西先生のCIのケース・スタディでは、どの事例もきれいな全体最適がなされていて、それを可視化したマップもとても美しくピタッとおさまりが良いので、いつもため息が出ます。(現在2期生はグループに分かれ同じテーマの下に課題に取り組んでいるのですが、この「全体最適」が本当に難しい・・・。なかなかきれいにおさまってくれないため、奮闘中です。)
前期、主に中西先生の授業を通して受講させて頂き気づいたことが一つあるのですが、それは「良いデザイン」というのは、まるでその解が「当たり前のように見える」という要素もあるのではないかということ。結果だけを見れば、その背景を知らない者にとっては「なぜ今までなかったんだろう?」と思わせ、あるいはそれすら考えさせない程に違和感なく受け入れられてしまう。おそらく、この時に買い物を楽しんでいた女性に「なぜ松屋銀座なのか?」と問いかけても、「だって、良いから。」といったような曖昧な答えしか返ってこないのではないかなぁと思います。「当然でしょ?」と言わんばかりの表情で。
ではなぜそれが「良い」のか?、先生のデザインが美しく感じるのは何故なのか、最適解を導きだすにはどうすればよいのか・・・。気づかされること、考えさせられること、STRAMDでは本当にたくさんの「思考の種」が得られます。最後になってしまいましたが、ブログのアップが1カ月以上も遅れてしまったことをお詫び申し上げたく思います。受講生が熱を持って講義を受け様々なコミュニケーションが生まれるのは、他ではありえない一流の講師陣による支えがあるからです。本当に多岐に渡る分野で、各先生方は今までに受けたことがないほど、心のある面白い講義をして下さいます。それに対し私たちもリアクションを返すこと、そして1期生の皆さんがして下さったように、STRAMDを次につなげることの重要性。改めて、STRAMDという場にいられることに対しての責任を感じました。
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授業の冒頭で中西先生が仰った「 人のゆく 裏に道あり 花の山 」という句。
学生一人、社会人の皆さんの中に紛れ込んで不思議な経験をしていますが、ヘタな就職活動よりも(就職活動もしなければいけないのですが)、ずっと未来に繋がる貴重な経験(花の山)であると確信しています。(なのでぜひ学生の方にSTRAMDに触れて頂きたいです!)
後期もどんどん「思考の種」を摘めるように頑張ります!
(2011.8.13 記)