2020.11.09
ニューノーマル時代に学ぶべきCI・戦略経営デザインの本質全3回特別集中講座オンライン(ウェビナー)のお知らせ
2018.01.10
《STRAMD》2018年度第9期生募集記念 公開シンポジウム(無料)のご案内
2017.01.16
《STRAMD》2017年度第8期生募集記念 公開シンポジウム(無料)のご案内
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第21回 記:中村尚史 第7回目の中西先生の授業です。 冒頭では、ヨーロッパの企業での文化と企業経営の関係についてのお話でした。 ヨーロッパの企業には 「富めるものは、富めないものを助ける」 (Nobless Oblige) というポリシーがあり、成功した企業は自国の社会的責任を積極的に果たし てきた伝統がありました。代表的な企業はミシュランやオリベッティなどであります。 これらの企業は「市場のメカニズム」だけでなく、「社会のメカニズム」 についても考えていました。 そのようなお話を聞いて、日本の経営者にはコストカットのことばっかりで社会性、公共性を持って経営されている人はあまりいないなと思っていましたが、ブリヂストンを創業された石橋正次郎さんという方は文化を愛する力が強く、ブリヂストン美術館の設立やあの国立近代美術館を寄贈したりなど公共的なことにも注力された人だったそうです。 そこで今回のメインは、PAOSがブリジストン50周年でロゴデザインを依頼されたときのお話です。 重要なポイントは以下の2点です。 1、タイヤに対して新しい価値を創造した 2、ロゴデザインにより、企業の進む先を示し、社員のモチベーションをあげ、会社を牽引していった 1、について PAOSはまず品質に対して新しい価値を創造しようと考えました。 そこで、社員にヒアリングをしたところ品質といえば耐久性やコストパフォーマンスという意識しかないことがわかりました。そこで、今度はユーザにヒヤリングしてみたところ「性能の良さはわかるがトレッドパターンがダサイ」という意見が出てきました。 そこから品質にPAOSは品質に対して、美的なイメージを付加するように提案し、結果的にタイヤに対して「単なる真っ黒なモノ」から美的なイメージを付加することに成功しました。 最終的に、品質を↓の3点のようにまとめました。 ・機能、耐久性、コストパフォーマンス ・美的、イメージ品質 ・環境、サスティナブル品質 その後、2010年にブリヂストンはF1の撤退を発表しました。それは、おそらくエコ時代の要請を受けて、3つめの「環境、サスティナブル品質」をより重視したのだと考えられます。 2、について PAOSが社内への調査で、社員に将来の夢はとヒヤリングしたところ「世界一のタイヤメーカ」という答えが返ってきました。そこで「世界一」という言葉を「F1レースにタイヤを提供できる企業にする」とうように解釈して、実際、F1の表彰台にロゴをのせても恥ずかしくないようなものを目標にしてデザインしました。 もともとのブリヂストンのロゴは黄色と赤色の配色のキーストーンマーク(凸)の中ににBS と入ったものだったが、 ・キーストーンマークは欧米では建設業を連想させる ・BSからブリヂストンを連想しづらい という理由から、キーストーンをやめて、BSと省略させずにBRIDGESTONEとし全体を右上がり斜めに上げるようなデザインにしました。 結果として、PAOSがロゴをデザインしたあと、さらに業績が伸びて世界6位から世界1位のタイヤメーカへ成長していき、実際、F1にもタイヤを提供するようになります。 授業で中西先生が、「情報化社会はイメージが半歩or一歩先を行き、実体を牽引するのが理想である」と言われていたが、まさに見事にその通りになった実例だと思います。 (所感) 毎度のことながら、授業中何度も目から鱗が出るような、非常に示唆の富んだ授業でしたが、個人的に感銘を受けたのが「タイヤの真っ黒なイメージを美的、イメージ品質に変えた」というところです。 現在、私は自動車会社でエンジニアをやっており、日々、お客様が運転の楽しさ(弊社ではdriving pleasureと呼んでいます)を感じてもらえることを目指して技術開発を行っています。しかし、日々の業務に追われて、ついつい単なる機能や耐久性レベルのことしか考えられず、美的なイメージや感覚でわかるような楽しさ、快適さまで考えがいかずに悩んでたりしています。 そういったところで、今回の授業であったように、もともと車の単なる機能であるスレッドパターンを外観デザインの領域まで広げる発想は、今後、自分が仕事をしていく上で、とても重要になると思います。悩んだとき、この授業を振り返っていきたいと思います。 以上 (2011.8.22 記)
第21回 記:中村尚史
第7回目の中西先生の授業です。
冒頭では、ヨーロッパの企業での文化と企業経営の関係についてのお話でした。
ヨーロッパの企業には
「富めるものは、富めないものを助ける」
(Nobless Oblige)
というポリシーがあり、成功した企業は自国の社会的責任を積極的に果たし
てきた伝統がありました。代表的な企業はミシュランやオリベッティなどであります。
これらの企業は「市場のメカニズム」だけでなく、「社会のメカニズム」
についても考えていました。
そのようなお話を聞いて、日本の経営者にはコストカットのことばっかりで社会性、公共性を持って経営されている人はあまりいないなと思っていましたが、ブリヂストンを創業された石橋正次郎さんという方は文化を愛する力が強く、ブリヂストン美術館の設立やあの国立近代美術館を寄贈したりなど公共的なことにも注力された人だったそうです。
そこで今回のメインは、PAOSがブリジストン50周年でロゴデザインを依頼されたときのお話です。
重要なポイントは以下の2点です。
1、タイヤに対して新しい価値を創造した
2、ロゴデザインにより、企業の進む先を示し、社員のモチベーションをあげ、会社を牽引していった
1、について
PAOSはまず品質に対して新しい価値を創造しようと考えました。
そこで、社員にヒアリングをしたところ品質といえば耐久性やコストパフォーマンスという意識しかないことがわかりました。そこで、今度はユーザにヒヤリングしてみたところ「性能の良さはわかるがトレッドパターンがダサイ」という意見が出てきました。
そこから品質にPAOSは品質に対して、美的なイメージを付加するように提案し、結果的にタイヤに対して「単なる真っ黒なモノ」から美的なイメージを付加することに成功しました。
最終的に、品質を↓の3点のようにまとめました。
・機能、耐久性、コストパフォーマンス
・美的、イメージ品質
・環境、サスティナブル品質
その後、2010年にブリヂストンはF1の撤退を発表しました。それは、おそらくエコ時代の要請を受けて、3つめの「環境、サスティナブル品質」をより重視したのだと考えられます。
2、について
PAOSが社内への調査で、社員に将来の夢はとヒヤリングしたところ「世界一のタイヤメーカ」という答えが返ってきました。そこで「世界一」という言葉を「F1レースにタイヤを提供できる企業にする」とうように解釈して、実際、F1の表彰台にロゴをのせても恥ずかしくないようなものを目標にしてデザインしました。
もともとのブリヂストンのロゴは黄色と赤色の配色のキーストーンマーク(凸)の中ににBS
と入ったものだったが、
・キーストーンマークは欧米では建設業を連想させる
・BSからブリヂストンを連想しづらい
という理由から、キーストーンをやめて、BSと省略させずにBRIDGESTONEとし全体を右上がり斜めに上げるようなデザインにしました。
結果として、PAOSがロゴをデザインしたあと、さらに業績が伸びて世界6位から世界1位のタイヤメーカへ成長していき、実際、F1にもタイヤを提供するようになります。
授業で中西先生が、「情報化社会はイメージが半歩or一歩先を行き、実体を牽引するのが理想である」と言われていたが、まさに見事にその通りになった実例だと思います。
(所感)
毎度のことながら、授業中何度も目から鱗が出るような、非常に示唆の富んだ授業でしたが、個人的に感銘を受けたのが「タイヤの真っ黒なイメージを美的、イメージ品質に変えた」というところです。
現在、私は自動車会社でエンジニアをやっており、日々、お客様が運転の楽しさ(弊社ではdriving pleasureと呼んでいます)を感じてもらえることを目指して技術開発を行っています。しかし、日々の業務に追われて、ついつい単なる機能や耐久性レベルのことしか考えられず、美的なイメージや感覚でわかるような楽しさ、快適さまで考えがいかずに悩んでたりしています。
そういったところで、今回の授業であったように、もともと車の単なる機能であるスレッドパターンを外観デザインの領域まで広げる発想は、今後、自分が仕事をしていく上で、とても重要になると思います。悩んだとき、この授業を振り返っていきたいと思います。
以上
(2011.8.22 記)