2010年度 カリキュラム@デジタルハリウッド大学院 2010年度 カリキュラム@デジタルハリウッド大学院

サムスンの経営とデザイン

日付
2010年10月16日 18:30~
場所
東京ミッドタウン
概要
サムスンの飛躍的躍進の陰にある秘密を探る
受講生の感想

記:桑原 朋子

第43回 記:桑原朋子

月1回の土曜日講座。今回は、日本サムスンデザインチームのチーム長、吉田道生氏のお話でした。日本の家電メーカー数社の営業利益を束ねても、サムスン1社にかなわなくなってしまった、その背景を聞きたいとおもって行きました。やはり、関心の高さを伺わせるように、いつもより多い参加者でした。

まず、最初に2代目会長の李健熙氏の言葉で、「単純に製品を売る時代を超え、企業の哲学と文化を売らなければならない時代になった」という1996年のデザイン革命の年宣言がありました。これは、いつも授業のなかで、中西先生が伝え続けていることで、この重要性に、気づき、会社としての方向転換を計ったことが、現在のサムスンの成功につながっていることがわかりました。

印象的だったのは、2つありました。ひとつは、人材育成のレベルが全く違うこと。ふたつめには、デザインの判断は経営者が行い、その為にデザイナーはロジカルに判断材料をそろえる仕事をしていることでした。他にも、ヒントになることがたくさんあって参加して良かったです。

ちょっと長いですが、できるだけ網羅しました。

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今回の講義内容は、下記のとおり。

<1>韓国産業の転換

<2>サムスンのブランド価値の創出のための3つのポイント

~組織力

~プロセス

~製品価値

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<1>韓国産業の転換

80~90年代:量的成長の時代/労働集約とOEMがメイン

97年:アジア経済危機/基盤産業の時代

2000年~:デジタル新経済/スピードと効率の時代

そのなかで、サムスンの動きは、93年:サムスン「新経営」宣言と、96年:デザイン革命の年宣言と、企業としての経営方向をデザインを重視したものにいいタイミングで転換できたのも経営者の手腕であり、危機の時に、いかにぶれずにその方向を守り続けることができるかも大事なこと。

<2>サムスンのブランド価値の創出

~組織力/長期人材育成

●デザインメンバーシップ

→1993年設立、学生を対象にした1年間のデザインスクールでデザイン教育がしっかりしていなかった時代のなかで大学生を教育し、実践的な訓練で社会に出てから即戦力となるような人材育成を目的としている。これは、各大学から生徒を集めることで、生徒が大学の課題でもこのスクールで学んだことを実践し、その結果大学の周りの学生のレベルアップにもつながり、韓国のデザイン教育のレベルの高さを築いた。

●デザインパワープログラム

→2003年設立。社内デザイナー7~10年目を対象に海外のデザイン事務所や大学に派遣し、この期間は、会社のデザインを離れひたすら勉強する。サムスンのデザインの強さは、徹底的な人材教育が鍵になっていることがよくわかる。

~製品価値

●デザインがコスト削減につながる

→サムスンのデスクトップの特徴だった、Wヒンジのデザインは、角度が変えられて使いやすいほかに、コンパクトにたためる為、物流コストの削減につながった。デザインが、ただカッコイイ見た目だけではなく、コスト削減にもつながることをきちんとアピールした。

●価格が安くなるということは、何を意味するか?

→テレビは、価格が劇的に安くなっていった。価格が安くなるということは購入する人間(ユーザー層)が変わっていくということ。それに合わせて、デザインを変えていく。デザインを変えることはリスクが伴うが、市場が納得する時期にタイミングよく出すのが必要。これは、いろんな人の意見を聞いていてはまとまらなく、遅れてしまうためトップダウンによってすすめる。これは、経営とデザインの「信頼関係」が必要。

~プロセス

●リサーチのレベルの高さ

→使用性の革新活動を自社で徹底的にリサーチ。韓国は、日本に比べて協力会社のレベルが低いため、自社でレベルの高い技術を持つことが求められる。

→ユーザーの感心の変化を体系的にリサーチする。リサーチをしつこく続けて、使えるレベルにまで昇華させたことが圧倒的な強み。市場動向を体系的に把握し、新市場を開拓できる事ができる。

●デザインは、誰が決めるのか?

デザインを誰が決めるか、あいまいなまますすめていることがデザインの力を弱めている。例えば、経営者がデザインを判断する、と決めてしまえばデザイン部門の仕事は、その判断材料を徹底的にそろえること。それを根拠に納得して出した経営者の判断は、会社としての判断になる。結果、他の部署からデザインに対する曖昧な要望がなくなる。デザイナーの「好き嫌い」のデザインではなく、どうすれば会社にとって良いことになるのか、「いい悪い」の判断ができるよう、経営者の視点を持って真剣に考えるようになる。その為には、経営者がデザインの必要性に気づいたことに加え、単に形を作るだけのデザイナーではなくデザインをロジカルに説明できるデザイナーの育成が必要。サムスンは、常にデザイナーがきちんと説明できるように準備し、それを上層部につたえる機会があるため、レベルが必然的に高くなっているのが、社内でデザインが力をもっている所以である。

詳しくは、こちらもどうぞ。日本サムスン広報誌「サムスンからの手紙」

http://www.samsung.com/jp/park/letter/25.html

《STRAMD》

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